2024年06月15日
せんべいや海苔などの食品のパッケージには、食品乾燥剤が封入されています。食品乾燥剤は空気中の余分な水分を吸収し、湿気を防ぐ大切な役割を果たしています。
食品用の乾燥剤には、シリカゲルや塩化カルシウム、シリカアルミナゲルなどのさまざまな原料が使われており、どれを使えばよいか迷う場合もあるかもしれません。
本記事では、食品乾燥剤の役割・効果・必要性や、主な原料の種類について解説します。
食品乾燥剤とは、せんべいや海苔、クッキーなど、吸湿性の高い食品を湿気から守り、長持ちさせるためのものです。ここでは、乾燥剤の果たす役割やシリカゲルとの違いを紹介します。
食品乾燥剤の役割は食品中の水分を一定に保ち、適度な乾燥状態を維持することです。そのため、食品乾燥剤には湿気を吸収したり、水蒸気に吸着したりする特性を持った原料が使われています。
食品によっては湿気によって食感が損なわれたり、品質の劣化が早まったりするものもあります。また日本のような高温多湿の環境では、包装やパッケージの内部に水蒸気が浸透し、食品にカビが生えるリスクにも注意しなければなりません。
食の安全を守るために、欠かせない働きをしているのが食品乾燥剤です。
食品乾燥剤と言うと、シリカゲルを思い浮かべるかもしれません。シリカゲルは二酸化ケイ素が水と結合したコロイド状ケイ酸の別名で、製造コストが安価で吸水力が高いことから、食品用の乾燥剤から精密部品の乾燥剤まで幅広い用途で利用されています。
しかし、食品乾燥剤はこのシリカゲルだけではありません。シリカゲル以外にも、さまざまな原料が食品乾燥剤として使われています。
食品用に使われる乾燥剤は、大きく5種類に分けられます。
食品乾燥剤の種類 |
特徴 |
シリカゲル |
固形で扱いやすく、製造コストが安価なため広く使われている |
塩化カルシウム |
薄く引き伸ばせるため、狭い場所や細長い場所でも利用できる |
合成ゼオライト |
他の乾燥剤と比較して、低湿度環境でも高い吸水力を発揮する |
シリカアルミナゲル |
シリカアルミナ、またはアルミナゲルと呼ばれ、シリカゲルとよく似た仕組みで水分を吸収する |
シート状乾燥剤 |
塩化カルシウムをシート状に加工したもので、特殊な用途に使われる |
同じ食品乾燥剤でも元になった原料によって、水分を吸収する仕組みや、低湿度環境・高湿度環境での吸水力が変わってきます。食品乾燥剤の種類ごとの違いを知り、自社の商品に合ったものを選びましょう。
シリカゲルは広く使われている乾燥剤で、製造コストが安く、かつ優れた吸湿力と吸湿速度を兼ね備えているのが特徴です。また粒状の固形であり、吸湿しても膨張しないため、安全に使用できるという利点もあります。
シリカゲルは大別するとA型とB型の2種類があり、それぞれ吸湿作用の働き方が異なる点に注意が必要です。食品用の乾燥剤はA型のシリカゲルで、B型のシリカゲルは主に工業機械や精密部品の乾燥剤として使われています。
塩化カルシウムは薄く加工できるという特徴を持った乾燥剤です。主に狭い場所や細長い場所向けの乾燥剤として利用されています。食品用の乾燥剤としては、個包装のお菓子などと一緒に封入されています。
塩化カルシウムには、急激に吸湿すると発熱する性質や、潮解性(熱によってドロドロに溶ける性質)があるため、乾燥剤として使用するには加工が必要です。塩化カルシウムの加工品の一例として、後述するシート状乾燥剤が挙げられます。
合成ゼオライトは低湿度環境における吸湿性能に優れた乾燥剤です。シート状やタブレット状に加工され、主に医療品や精密部品など、厳格な品質管理が求められる製品の乾燥剤として使われています。シリカゲルと同様に化学的な安定性が高く、人体にとって有害な物質も含まれていないため、安心して使用できます。
シリカアルミナゲルは、シリカアルミナやアルミナゲルとも呼ばれ、シリカゲルを加工し、アルミナを加えた乾燥剤です。
シリカゲルとよく似た吸湿性能を持ちますが、高湿度環境における吸湿力はシリカゲルに劣り、一方で低湿度環境ではシリカゲルよりも優れた働きをします。そのため、シリカアルミナゲルは主に工業用の乾燥剤として使用されますが、活性炭を凌駕する脱臭性能を持つという点から、食品乾燥剤として使われる場合もあります。
乾燥剤と言うと粒状や袋状のものをイメージするかもしれません。しかし、乾燥剤にはシート状のものもあります。それが塩化カルシウムを薄い板状に加工したシート状乾燥剤です。
シート状乾燥剤はその薄い形状を活かして、食品包装用の台紙やトレーの代わりに使われています。袋状の乾燥剤と違って、衝撃により袋が破れ、中身が飛び出す事故も起こりません。
塩化カルシウムは熱に弱く、潮解性を持つ原料ですが、シート状に加工する過程で潮解性は取り除かれています。ただし、シート状乾燥剤は特殊な加工が必要なことから、通常の乾燥剤よりも製造コストがやや割高になりやすいというデメリットがあります。
食品用乾燥剤を使うときのポイントを3つ紹介します。
● 密閉できる容器に入れる
● 用途に合わせて最適なものを選ぶ
● 捨てるときは分別に注意する
食品用乾燥剤の使い方によっては、吸水力が低下してしまう場合もあるため、製品の注意書きを守り、正しく使用してください。
食品乾燥剤は密閉できる包装やパッケージに入れての使用が大切です。容器に入れる場合は蓋が付いており、しっかりと閉まる構造のものを選びましょう。
容器が密閉されていないと、隙間から水蒸気を含んだ空気が侵入し、食品乾燥剤の効力が低下してしまいます。食品乾燥剤を長持ちさせるためにも、密閉できる容器に入れて使用しましょう。
また食品乾燥剤は、用途に合わせて最適な種類のものを選ぶことが大切です。
例えば、シリカゲルのように幅広い用途で使える乾燥剤もあれば、合成ゼオライトのように医療品や精密部品の品質管理という点で、シリカゲルよりも優れた吸湿作用を発揮する乾燥剤もあります。
また同じシリカゲルでも、A型かB型かによって吸湿作用の働き方が異なります。一緒に封入する商品の特性に合わせて、適切な種類の乾燥剤を選びましょう。
食品乾燥剤を捨てるときは、分別ルールに注意しましょう。自治体によって、食品乾燥剤の分別ルールが異なる場合があります。
基本的に乾燥剤は可燃ごみ(燃えるごみ)として処分できる自治体がほとんどですが、不燃ごみに分類されるケースもあるため、処分する前に自治体のホームページを確認してください。
食品乾燥剤はシリカゲルだけではありません。塩化カルシウムや合成ゼオライト、シリカアルミナゲル、塩化カルシウムを加工したシート状乾燥剤など、さまざまな乾燥剤が食品用に使われています。乾燥剤の種類によって一長一短があるため、自社の商品に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
また食品乾燥剤の使い方にも注意が必要です。乾燥剤を封入するときは、吸水力が低下しないように容器やパッケージを密閉しましょう。また乾燥剤が不要になったら、自治体のルールに従って分別してください。
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